以前の記事で書いた通り、現在借りている家は非常に子育てしづらいため、なるべく早く引っ越そうということになった。
前回の記事はこちら↓

しかし、この街には特殊な住宅事情があるのか、リフォームを前提にしても「マトモ」な物件を探すのに大変苦戦し、購入に踏み切れる家が見つからないまま1年が経ってしまった。
今回は、これまで見てきた物件の中でも(何故?)と問いたくなるような物件を紹介しようと思う。
住み心地抜群のヴェルシリアの田舎町
現在私達が住んでいるイタリアトスカーナ州の海辺のエリア、ヴェルシリア地方は山と海に囲まれているため夏は涼しく、冬はそこまで冷え込まず、とても過ごし易い。
イタリア有数のビーチリゾートでありながら、夏の最高気温は30℃前後。
暑い日でも夜は20℃近くまで下がり、22時を過ぎると山側から冷たく涼しい風が吹いてくる。
最近の異常気象で先週は35℃を超える日もあったが、冷房が無いといられない、という日はひと夏に1〜2週間程度だ。
また、南のヴィアレッジョから北のマリーナディカラーラまで伸びるビーチ沿いには「bagno(バーニョ)」と呼ばれる貸しパラソルの施設(日本で言う海の家)が無数に並ぶ。
この街の住民はこのバーニョの貸しパラソルをシーズンで借り、夏の間は毎日のように海に通うようだ。
7〜8月は国内外からもバカンス客が詰めかけ、ビーチは大賑わいとなる。
バカンス期間中はいくつもの夜間営業の移動遊園地が開業し、ヴェルシリアの街々は毎晩深夜まで賑わう。
昼はビーチ、夕方は海を眺めながらアペリティーボ、夜は街中が毎晩お祭り。
ヴェルシリアの夏は最高だ!
一方、ビーチからほんの数キロ内陸へ入っただけで街の雰囲気は一気に高原へと様変わりする。
山側の町にはリーゾナブルで美味しいレストランが多い。
そして治安も良い。
バカンス客は多いものの、ツアーで訪れるような観光地とは違ってスリやひったくりは全く見かけないし、ぼったくる店も無い。
その中でも今住んでいる小さな町は、スーパーや病院など生活に必要な施設がコンパクトにまとまっていてとても生活し易い。
このヴェルシリアの田舎町を気に入った私達は、この町で家探しを始めた。
購入する家の最低条件
建物を長く利用するイタリアでは新築物件を購入するよりも中古の物件の内装を綺麗にリフォームして住むことが多く、購入時に内装はそこまでこだわる必要はない。
とはいえリフォームではどうにもならない部分は購入時の最低条件になる。
マンションの3階以上
戸建ても考えてみたが、セキュリティ面やゲリラ豪雨で道路が冠水する事態になった時のことを考えると、やはりマンションが良いということになった。
それも1、2階ではなく3階以上だと安心だ。
ベビーカーが入るサイズのエレベーターがあること
日本でエレベーターにベビーカーが入らないなどという話は聞いたことがない。
しかし私が住むこの町ではむしろエレベーターを備えた物件自体が少ない。
あったとしても大人2人が入ってギチギチになるようなミニサイズばかり。
ベビーカーをストレス無くスッと乗せられるエレベーターがある物件を探すのは至難の技だ。
エントランス前に階段が無いこと
首座り前の乳児を乗せる頑丈なベビーカーは、私の力では全く持ち上がらない。
今の家はエントランス前に5段の階段があり、私1人では首座り前の息子を散歩に連れて出ることができなかった。
現在は少し軽いA型ベビーカーになったので何とか持ち上げることができるものの、息子がさらに重くなったらまたもや外に出られなくなってしまう。
なので、早いところエントランス前に階段が無い物件に引っ越したいのだ。
キッチンとリビングを繋げられること
現在の家の最大の悩みが、キッチンが家の奥まった所にあるおかげで料理をしていると家の様子が全く分からないことだ。
日本でよく見かける住宅のように調理台がリビング側に向いたキッチンであれば子供をリビングで遊ばせながら料理をすることができるのに、それが全くできないのだ。
息子は1人でお昼寝させると10分で起きてしまうので、寝かせている間に家事をすることもできない。
幸い現在は夫が17時半に帰って来て息子の面倒を見てくれるのでその間に夕飯や離乳食を作ることができるが、夫の帰りが遅くなってしまった場合はそれもできなくなってしまう。
そのためオープンキッチンが私の必須条件だが、現在借りているような1970年代の家だとリビングが個室のようになっているので、リフォームしてもキッチンと繋げることができない。
なのでキッチンとリビングが隣り合った間取りであることも最低条件だ。
1年間で出会ってきたズッコケ物件達
たったこれだけの最低条件でもこの町でこのような物件を探すのは困難を極めた。
どれだけ探すのが難しいかというのを分かって頂くために、内見するに至ったにも関わらず実際に見に行ってみたらズッコケた物件達を紹介する。
エレベーター付きなのにエントランス前に神社並みの階段
住宅を探す際、エレベーターの有無は確認できるが、建物の前に階段があるか否かは実際に内見に行ってみないと分からない。
なので、少し良さげな物件だと思って見に行ってみれば…建物のエントランス前に聳える20段は軽く超える階段。
…エントランスが果てしなく遠い…毎日が修行。。
私達が呆然と階段を眺めていると、中からベビーカーを抱えたママさんがゼェゼェしながら降りて来て、
「この家で子育てするのは不可能よ!」
と言ってきた。
おかげで内見前にこの物件はアウトとなった。
エレベーターの入り口が各階の中階
これもまたエレベーター関連の残念物件である。
中々広くて立地も良い物件が見つかり、少し期待に胸を膨らませて内見に行ってみれば…
何故かエレベータの入口が各階の中階に。
エレベーターに乗るためにエントランスから8段ほど階段を上らなければならない。
そして苦労してベビーカーを担ぎ上げてみると、今度は入口が小さ過ぎてベビーカーがエレベーターに入らない。
しかも不動産屋から、今の部屋の売主がエレベーターの設置費用を払っていないために利用権が無いので、内見の私達も使えないと言われる。
エレベーターがあるのに使えない…そんなこと有り得るのか?
そしてそういう情報はサイトの注釈にでも書いておいて欲しい。
エレベーター設置を巡った住民トラブル
エレベーターを後付け設置した物件では、この設置料を巡って住民同士がトラブルを起こしているケースが非常に多い。
上記の物件のように売主がエレベーターの設置料を払ってないせいで利用権が無いという物件もあれば、0階の住民が「俺達は使わないのに何故エレベーターの設置料を負担しなきゃいけないんだ!」と言い張ってトラブルになっているケースもよく聞く。
いくらエレベーターがあっても、住民同士がいがみ合っている物件もちょっとくわばらである…
ベランダの真正面に教会の鐘楼(近い)
この立地でこの階なら確実に目の前に海が見えるぞ!
という少し期待できそうな物件があったので内見に行ってみれば。
海を真正面に見渡せるはずのベランダの真前には教会の鐘楼がどーんと構えていた。海は見えない。
この鐘楼、少し離れていれば風情があるかもしれないが、近過ぎる…。
鐘楼が眺められるというより鐘楼しか見えない。
鐘楼に留まっている鳩に餌をやれそうな距離である。
オーシャンビューを期待して行ってみれば鐘楼ビュー。
これが鳴った時にはもう家の中での会話も成り立たないほど轟音だろうと予想できた。
私達は静かにその家を去った。
向かいの家に「猛犬注意」の看板
また、ある物件では同じ階のお向かいさんが玄関に「猛犬注意」の看板を貼っていた。
…いや、マンションで猛犬注意とか言われてもどうしろと…?
と思いながら私達が部屋を内見していると、お向かいさんのドアが開き、中から息の荒い大型犬3匹が飛び出してきた。
一応リードは付けて飼い主が引っ張っていたものの犬達の力の方が圧倒的に強く、アンコントローラブル。
犬達は猛烈な勢いでこちらの家の中に突進して侵入して来、私は思わず息子を庇って身をかがめた。
辛うじて飼い主が引き戻してエレベーターまで引きずっていったが…
いやこんなのが向かいに住んでたら毎日怖過ぎる。
というわけで即却下。
外観は良いと思ったら内装共有部分がボロボロ
1970年代の物件ばかりを見てくると、たまに80年代の物件があると(お、新しい♪)と思うようになる。
早速内見に行ってみると、外観は可愛らしく、これまで見てきた物件のように鯖落ちたり雨垂れで汚れたりしておらず、綺麗だった。
敷地内の中庭も綺麗に手入れされているようで、これは期待できるぞ!と中に入った瞬間。
0階のエントランスの内装はボロボロ。
壁がボロボロ剥がれ落ち、掃除もされずに破片が床に散らばっており、壁全体も薄汚れ、照明は暗くてまるで廃坑となって朽ちた鉱山にいるようだった。
部屋自体はリフォームすれば中々良い部屋になりそうだったが、共有部があまりにボロ過ぎ、住む気になれなかった。
唯一の新築!なのに風呂が棺桶
ある日、この町としては超レアな、築5年というほぼ新築の部類に入るマンションに売り出し中の部屋が見つかった。
早速内見に行くと、エントランスはバリアフリー!の上に入り口も自動ドア!
このイタリアという国に非接触で入れるマンションがあったとは〜!!これだけで超感動である。
そして綺麗でピカピカに磨かれた廊下。
エレベーターも日本基準の普通のエレベーターだ!
サイズも普通だし、ドアも自分で開けなくて良い、正に普通のエレベーター!!
これだけでもうテンション上がりまくりの私。
部屋が少し難ありでも、ここなら住んでも良いとさえ思うほどだった。
…が、しかし。
「この部屋はジャグジー付きのバスタブがあります」
と言われてテンションMAXで見に行ってみれば…
バスルーム、狭っ!
というかジャグジー付きのバスタブなどどこにも見つからないが…?
と思っていたら入り口の右脇を見ると壁に突き刺さるような形で埋もれたバスタブが。
バスタブの3分の1ほどがバスルームに突き出し、残りの部分は壁の中に埋もれている。
蛇口のある先端側から体を滑り込ませるようにして入らなければならない。
いや、これはもはやバスタブというより石棺。。
ジャグジーありますよとか言われても、こんなバスタブ、1分1秒でも早く出てしまいたいと思うわ。
設計士は十人を馬鹿にしているのか?
と、憤慨しながらその物件も後にした。
何故ここまで物件が見つからないか?この町の物件事情(推測)
とまあ、内見に至った物件ですら上記のような有様だった。
しかし、何故にここまでマトモな物件が見つからないのか。
そして日本であれば絶対に買い手の付かなそうなこれらの物件が、フィレンツェ近郊の80㎡ほどの家と同じくらいの値段がついていたりするのだ。
大理石産業が先細りで将来のポテンシャルも低いこの町で、歴史的価値も無いボロ家の中古物件が何故にこれほど高いのか、初めは理解に苦しんだ。
しかし私達は段々とこの町の物件事情が分かり始める。
それは、物件コレクターのおじいちゃんおばあちゃんの存在だ。
これらのボロ物件のオーナー達は皆おじいちゃんおばあちゃんで、この町の中に複数の物件を保有している。
そしてそれらを子供達に相続させるのだ。
つまり、この町の物件は世襲性なのだ。
何らかの事情で相続に至らなかった物件のみが市場に出回り、結果、物件需要に対して売りに出される物件数が圧倒的に少ない。
さらに、売主達は積極的に売りたいとは思っていないらしく、この高めの値段設定で売れないならそれで良いということらしい。
同じ町に住む日本人の先輩にも話を聞いてみたところ、彼女も家探しに苦労し、現在の家を見つけるまで4年もかかったそうだ。
というわけでこの町での物件探しの難易度は尋常でないことが身に沁みて分かったのだった。
こうして私達の家探しの苦悩は続く。
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