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妊娠40週5日の晩のおしるしから前駆陣痛、破水、本陣痛に耐えた3日間。
41週2日は未明の破水で始まり、本陣痛に耐え続け、長い一日となりました。
今回は、ようやく子宮口が開いた41週2日のその後の話です。
妊娠41週2日夕方。ついに硬膜外麻酔投入!
17時半、いざ分娩室へ
最終段階の陣痛中に産道に手を突っ込まれて中を掻き回されるという、限界を超える痛みを味わった私は、下半身が痙攣し、立ち上がれる状態ではなかった。
意識が飛びそうで、呼吸も整わない。
もわんとした意識の中で、助産師さんが車椅子を運んで来るのが見えた。
私は両脇から支えられながらヨロヨロと車椅子に座る。
夫は事前に私が伝えておいた、分娩時のためのグッズが入ったバッグを持って一緒に付いて来てくれていたが、途中で誰かに呼ばれて別の場所へ行ってしまった。
分娩室は陣痛室の2倍くらい広かったが、あまり物は無くガランとしていた。手前には部屋付きのシャワートイレがあり、奥に分娩台と思われるベッドがあった。その奥の縁側のような空間にはバランスボールなどの出産の際に使いそうなグッズが並んでいた。
中では麻酔科医と思われる50歳前後と思われる女性医師と看護師さん数名が待機していて、私に挨拶してくれた。
私は車椅子でベッドまで運ばれ、ベッドに登るように指示される。しかしこのベッドが胸の下ぐらいの高さがあり、ここまで足を上げたらその刺激で陣痛が来てしまい、登れない。看護師さんが踏み台を用意してくれ、やっとよじ登った。
男性医師のような人物が私の荷物を持って部屋に入って来たと思えば、青い手術着とキャップ、マスクに身を包んだ夫だった。
地獄のNST、再び。
すぐに麻酔の処置をしてもらえるのかと思いきや、ここでもまたNST。
早く、早く麻酔を打ってくれないとまた次の陣痛の波が来てしまう!
と心の中で叫んでいたが、またひんやりとしたジェルがつけられた吸盤をお腹に装着され、固定ベルトをされて痛みが増幅される。
また地獄の20分。上げ下げされるフリーフォールに乗せられたように、地獄のような痛みが2、3分間隔で襲ってくる。
耐え続けた20分。
破水から16時間が経っていたが、お腹の中のベビーはまだいたって元気。心臓も全く問題無いとのことで、やっと麻酔の処置を始めてもらえることになった。
硬膜外麻酔の投入処置
先ほど挨拶した麻酔科医のおばちゃん先生に、先生の方に背を向けてベッドの上に座るように指示される。
言われた通り、先生の方に背を向け、背中を丸めて頭を低くする体勢を取る。
背中を丸めると腹が圧迫され…その刺激でまたあの嫌な無重力感に襲われる。
…来るっ!!!
と思った瞬間、またあの重力100Gの圧力が私の下腹部に襲いかかった。
両目をかっ開いて宙を見つめて呼吸に専念し始めた私を見て、夫が
「陣痛です。」
と言ってくれたので麻酔の処置がそこで一旦ストップされた。
早く…早く麻酔をォ…っ入れてくれ!
もうあと一回でさえもこの恐怖の痛みに耐えられそうもなかった。
何とか陣痛をやり過ごすと、処置が再開された。
医師「これから麻酔を入れる処置をするけど、その間は腕一本でも動かさないように。」
と念を押される。
私「でもその間に陣痛が来たら…?」
夫の通訳を介して尋ねてみる。
医師「その時は処置を止めるので教えて下さい。」
もう陣痛は2〜3分間隔になって来ていたので、その合間を縫って処置をしなければならない。
頼むから処置中に陣痛が来ませんように…!
そう祈りながら、指示された通りに背中を丸め、頭と肩を限界まで落とした。
さらに看護師さん達が私の肩と頭を動かさないように押さえつけられた。
初めに打たれた痛み止めの注射は、ピクリとも動かずにクリア。陣痛に比べたら糸くずが鼻の頭をかすった程度だ。
2本目は背中に針を打ち込む。これはギィ…ン、と嫌な間隔が背中に迸ると同時にまた無重力感に襲われ、反射的に少しピクッと動いてしまった。
医師「No!」
とかなりの剣幕で怒られたが、
私「陣痛が…っ」
と言うと、そこで一旦麻酔の処置が停止された。
この、背中を丸めて頭を思いきり倒して頭を押さえつけられた苦しい体勢で陣痛がやって来た…!
先ほどの陣痛中の内診を除けば、この時の陣痛を堪えるのが一番苦痛だった。
息苦しさに耐えながら、下の穴から内臓が飛び出しそうな感覚に必死で堪える。
(耐えろ…!きっとこれが最後の陣痛だ!)
そう自分に言い聞かせ、1分半の間、拷問のような痛みに堪え続けた。
そして処置が再開された。
背中に差し込まれた注射針からチューブを伸ばされ、右肩に先端が来るようにテープで固定された。思ったよりもあっという間の処置だった。
ついにepidurale(硬膜外麻酔)投入!
麻酔科医の先生が行ってしまうと、残った助産師さんにまたNSTをしますと言われる。
えっまたやるの!?
まあいいや。麻酔が効いてるならもういくらでもやってくれ。
と思い、仰向けになって吸盤をくっつけられ、ベルトで固定され…としているうちに、心なしかまたあの不気味な無重力感に襲われ始めた。
…麻酔、効いてないんじゃ!?
私「あの、麻酔か効いてない気がするんですけど?」
助産師さん「ああ、まだ針を入れただけで麻酔は入れてないもの!NSTで心拍に問題無いか見てから入れます。」
とのこと。
がーん…
と言うことは今から襲って来ようとしているコレにまた耐えなければならないのか…
私が覚悟を決め、不気味な無重力感が絶望的な痛みへと変わり始めたその時。
助産師さん「心拍は問題無さそうなので、麻酔入れますね!」
と言う声が聞こえたと同時に、右肩に固定されたチューブの先へ、注射器の中に入った青い液体が注がれていく。そして冷んやりとした物が背中から体の中に広がっていくのが分かった。
私の中で頭をもたげようとしていた絶望的な痛みが、この神聖な青い力によって鎮められていくのを感じた。
陣痛が…消えていく…!!
そしてこの神の液体がもう一本の投入され、私は約40時間ぶりくらいに陣痛から解放された。
遥か遠い昔の、苦痛とは無縁だった天国の日々に舞い戻っていった。
意識がハッキリとして来、久しぶりに痛みに怯えずに自由に体を動かせる感覚が戻った。
これが無痛分娩の力…!!
清々しい気分に浸っている私に、助産師さんが言った。
助産師さん「内診(visitare)します。」
げ。また内診…
先ほど失神寸前なほど痛かった記憶が蘇り、恐怖に震えそうになったが、麻酔をしているから大丈夫だと気持ちを奮い立たせた。
案の定、産道の中をかき混ぜられても全くへっちゃらだった。
助産師さん「この状態で子宮が全開大になるまで待ちます。リラックスして待っていて下さいね。22時頃にまた様子を見ます。私はその時には上がってしまっていますが、別の助産師が来ます。もしまた麻酔が必要になってきたら呼んでくださいね。」
この時が18:30〜19:00頃だったから…3時間近く休めるということか!
子宮口6cm→全開大までは天国タイム
束の間の休息。天国のような時間。
約40時間ほとんど寝ていなかった私は、痛みの地獄から解放され、猛烈な睡魔に襲われた。
夫は、助産師さんから荷物を陣痛室から入院室へ移すように言われて出て行った。
私は休憩の間に糖分を摂るように言われていたので、夫は私にレモンティーを買って来てくれた。
痛みが無くなったので猛烈に空腹を感じたが、固形物はNGということだったので食べられず。日本から遠路はるばる持って来た蒟蒻ゼリー袋タイプを夫に渡してもらい、これで空腹を凌いだ。
しばし夫と談笑していたが、私は眠りに落ちた。
夫も疲労困憊だったようだが、用意されていた椅子は硬くて座り心地が悪過ぎ、どんなに疲れていても寝られないほど酷かったようだ。
子宮口が開くまで寝て待っていられるなんて…無痛分娩とはなんと素晴らしいのだろう!
20時半過ぎに先ほどの助産師さんが様子を見に来た。
麻酔が切れてしまうことを極度に恐れていた私は、左下腹に若干の痛みを感じ始め、麻酔を追加してもらった。
助産師さんは「私はこれで失礼しますが、頑張って下さいね!」と英語で言い、部屋を出て行った。
その後、私は分娩台の上で深い眠りに落ちて行く…
後から思えば、この束の間の休息が、この後の最後の踏ん張り、さらにその後に待ち受ける24時間の育児生活との明暗を分けたのだった。
陣痛促進剤(オキシトシン)の投与
22時半頃、私達を陣痛室へ案内してくれた、あの可愛い助産師さんや、40代後半と思われる男性の産婦人科医など、5,6名がゾロゾロと分娩室に入って来た。
この病院で初めて見る男性の産婦人科医だった。
ここで男性医が内診すると言う。この可愛らしい助産師さん(後に名前を聞くと、リタさんというらしい)が医師の言葉を通訳してくれた。
麻酔のおかげで内診への恐怖心はもう無かった。
内診の結果、子宮口は6cmのままで止まってしまったという。
やはり無痛分娩の話でよく聞くのが、麻酔を投与したら陣痛が止まってしまうという話だった。
私が事前に観た日本の出産のyoutube動画では、一度麻酔を投与したものの、子宮口が開かなくなってしまったのでまた開くまで麻酔が切れるのを待ち、再び陣痛に耐えなければならないという酷いものだった。
私も再びあの痛み地獄に突き落とされるのだろうか?
内診が終わると、リタさんを残し男性医や他の助産師さん達は去って行った。
リタさん「これからオキシトシンという、陣痛を促すホルモンを投与していきます。分娩を行うには陣痛が不可欠なので、どうしても投与しなければなりません、ただ、麻酔と同時並行で投与して行くので、安心して下さい。」
麻酔を止めなくて良いのか!
一瞬絶望的な気分になりかけたが、再び陣痛を味わうことはないと知り、一気に気分が明るくなった。
すぐにオキシトシン投入の準備がされ、予め腕に打っていた点滴の管に、今度はオキシトシンの薄黄色い液体が繋がれた。
またしばし子宮口が開くまで待つことに。
リタさん「少し動いて胎児を起こしましょう!」
ということでベッドから降り、腰を横にゆらゆら動かす運動をしたり、少し行ったり来たりするなど、軽い運動をした。
23時過ぎに段々と腹部の張りや膀胱、膣への圧迫感を感じるようになり、まだ軽い痛みではあったが、陣痛への恐怖心からまた麻酔をお願いした。
長かった41週2日目はこうして終わろうとしていた。
つづく。
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