日本ではヴェルシリア地方と聞いてピンとくる人は少ないのではないだろうか。
ヴェルシリア地方は、ブーツの形をしたイタリアの膝下の辺り、トスカーナ州北西部にある海辺のエリアで、イタリア人はもちろん、ヨーロッパやロシアなどに愛されている人気のリゾート地だ。
イタリアへ来て海リゾートという人は少ないかもしれないが、ヴェルシリアであればフィレンツェからも近いので旅程に組み込むのも難しくない。
ローマやミラノなどの超有名観光地とはまた違ったイタリアを体験できるだろう。
ヴェルシリア地方の位置と範囲
ヴェルシリアは、ブーツの形をしたイタリアの膝下辺りの位置にあるが、このエリアの範囲についてはいくつか説がある。
ヴェルシリア地方の位置

https://www.versilia.org/en/information/map-of-versilia
ヴェルシリア地方はイタリアトスカーナ州の北西部にあるルッカ県の海岸地域のコムーネを指す。(場合によっては北隣のマッサ・カッラーラ県の一部を含める説も)
西側のティレニア海、東側の白い大理石の山脈アプアンアルプス(アルピアプアーネ)に囲まれたリヴィエラの地域だ。
↑フォルテ・デイ・マルミの桟橋から見たアプアン・アルプス。画面中央の奥に白い山々がうっすら見える。
ヴェルシリア地方の街々は電車でも車でもアクセスが良い。
電車だとフィレンツェからは約1時間、ピサやルッカからは20分程度で行くことができる。
また、ヴェルシリアに沿って高速道路が走っているので、車があればローマからでもミラノからでも簡単に行くことができる。
ヴェルシリア地方の範囲
現在の一般的なヴェルシリア地方の範囲
https://www.immobiliarestagit.it/1_affitto.htm
広義のヴェルシリア地方の範囲
https://ja.traasgpu.com/
ヴェルシリア地方と呼ばれる地域に含めるコムーネについては諸説あるが、近年では便宜上拡張されて解釈されることが多いようだ。
ヴェルシリア地方は、元はルッカ県(Lucca)の以下の4つのコムーネのみとされていた。
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- ピエトラサンタ(Pietrasanta)
- フォルテ・デイ・マルミ(Forte dei Marmi)
- セラヴェッツァ(Seravezza)
- スタッツェーマ(Stazzema)
しかし現在では以下の3つのコムーネまで含めるのが一般的とされている。
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- カマイオーレ(Camaiore)
- マッサローザ(Massarosa)
- ヴィアレッジョ(Viareggio)
さらに、同じ砂浜が北隣のマッサ=カッラーラ県(Massa-Carrara)まで続くことから、以下の2つのコムーネもヴェルシリアとして語られることがある。
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- マッサ(Massa)
- カッラーラ(Carrara)
※通常この2つのコムーネは「アプアーネ地方」と呼ばれる。
以上の7〜9つのコムーネがヴェルシリア地方の範囲となる。
ヴェルシリア地方の街々
ヴェルシリア地方の街々については別の記事で紹介しているので、併せて読んで頂ければと思う。
コムーネ(基礎自治体) | 特徴 | 紹介ページ |
ピエトラサンタ(Pietrasanta) | ヴェルシリアの中心でアートの街。ここで採れる高品質な大理石はミケランジェロに愛された。 | 大理石の街、ピエトラサンタ(Pietrasanta) – 世界中の芸術家が集まる”リトルアテネ”【イタリア】 |
フォルテ・デイ・マルミ(Forte dei Marmi) | イタリア人憧れの海辺リゾート。イタリア版ビバリーヒルズ。 | フォルテ・ディ・マルミ(Forte dei Marmi)- セレブが集うトスカーナのビーチリゾート |
ヴィアレッジョ(Viareggio) | 欧州三大カーニバルの開催地。広い砂浜にどこまでも続く遊歩道、リバティ様式の建築物が魅力。 | ヴィアレッジョ(Viareggio) – 広い砂浜が魅力のイタリア有数の海辺リゾート |
ヴェルシリアで過ごすトスカーナの休日
ヴェルシリアで過ごすイタリア式のバカンスとはどのようなものか、一例を書いてみよう。
ヴェルシリアのビーチライフ
夏にイタリアを訪れたなら、イタリア式のバカンスを楽しまない手は無い。
イタリア人は皆、ビーチが大好きである。
ヴェルシリアには毎年夏にフィレンツェやミラノから沢山のバケーション客が訪れ、特に7月〜8月は街が一気に活気づく。
ビーチ沿いには”bagno(バーニョ)“とか”Lido(リード)“と呼ばれる海の家が立ち並び、ビーチ一帯に敷き詰められたビーチパラソル&ビーチチェアのセットを貸し出している。
パラソルの値段は1日20€から高いものでは2000€と、ピンキリだ。
シーズンパスのようなものもあるので、夏の間中パラソルを借り、毎日ビーチに通うファミリーも多い。
わずかながらフリーのビーチエリアもあるため、地元民は自前のパラソルを担いでフリーのビーチに行き、リーゾナブルに過ごす。
イタリア人は朝からビーチへ繰り出して午前中は海で泳いだりビーチで昼寝をしたりして過ごし、長いランチを楽しんだ後は自宅やホテルに戻ってシエスタ(昼寝)。
そして夕方18時頃にアペリティーボへ繰り出し、20時半頃からディナーをし、午前1時〜2時頃までナイトライフを満喫するのだ。
ヴェルシリアのナイトライフ
↑画像はフォルテ・デイ・マルミの夏の夜の様子。
日中はビーチを満喫してシエスタで一休みしたら、ドレスアップをしてアペリティーボへ繰り出そう。
アペリティーボは「食前酒」と訳されるが、夕食の前の軽い一杯、といったイメージだ。
夏のイタリアは日が長いせいか、ディナータイムは恐ろしく遅い。
レストランは20時を過ぎないと開かないし、20時半に店に入ってもガラガラだ。
イタリア人達は21時頃までのんびりとアペリティーボを楽しみ、それからレストランに向かうのだ。
21時を過ぎるとようやく辺りが暗くなり、レストランにも客が入り始める。
そして0時過ぎまでディナータイムとなる。
↑0時を回ってもこの人手。
海沿いの街では店や広場にサマーミュージックが流れ、人々は踊ったり夕食やカクテルを楽しんだり立ち話をしたりして楽しむ。
7月〜8月の夜は毎晩こんな感じだ。
とにかく街を歩いているだけで楽しい。
中世の街や大理石、グルメ…ヴェルシリアの魅力
ヴェルシリアの魅力はビーチライフだけではない。
歴史的建造物やオペラ、アート好きな人の心を射止める素晴らしい見どころも沢山ある。
ミケランジェロが愛した街、ピエトラサンタ
ビーチエリアにはモダンなレストランやホテルが軒を連ねるが、ほんの数キロ内陸へ入れば、中世の面影が残る美しい地方都市がある。
例えばヴェルシリア地方の中心であるピエトラサンタは、こじんまりとしているが丘の上に城跡が残る美しい街だ。
高品質な大理石の産地でもあり、あのミケランジェロが真っ白な大理石を買い付けに来た街でもある。
現在でも大理石の産出・加工がメインの産業になっているためか、街中には彫刻家や画家のアトリエがそこかしこにある。
ピエトラサンタについての記事はこちら↓

リバティ様式の建築の宝庫、ヴィアレッジョ
ヴィアレッジョには19世紀の末にアール・ヌーヴォの波が押し寄せた。
結果、そこここにリバティ様式の美しい建物が建てられ、現在は海沿いの遊歩道に沿って建築物を眺めながら散歩することができる。
また、ヴィアレッジョは欧州三大カーニバルの開催地としても知られている。
2月にイタリアを訪れたなら、カーニバルは必見だ。
ヴィアレッジョについての詳しい記事はこちら↓
https://luitalia.com/viareggio-attraction/
ヴィアレッジョのカーニバルについてはこちら↓
https://luitalia.com/viareggio-carnival-2020/
プッチーニ邸があるTorre del Lago(トーレ・デル・ラーゴ)
ヴィアレッジョには、Torre del Lago(トーレ・デル・ラーゴ)というfrazione(フラッツィオーネ:分離集落)がある。
トーレ・デル・ラーゴはヴィアレッジョの中心街の南に位置するMasaciuccoli(マサチュッコリ)湖という湖のほとりにある。
このトーレ・デル・ラーゴに、有名なオペラ作曲家ジャコモ・プッチーニが住んでいた邸宅が残されている。
「蝶々夫人」や「トゥーランドット」などの数々の代表作が生まれたこの邸宅は現在では博物館になっており、毎年7月〜8月にはここでプッチーニ音楽祭というオペラ音楽祭が開かれる。
美味しい海の幸と山の幸
海と山に囲まれたヴェルシリアでは、海の幸も山の幸も堪能することができる。
海沿いでは断然シーフードがお勧めだ。
マグロやサーモン・ブランジーノ(スズキの仲間)などは生でタルタルにして出してくれる店も多い。
カラマリのフリットはイタリア人に大人気メニューだ。
9月〜11月になれば山に近い内陸の地元レストランではポルチーニ茸をふんだんに使った季節限定のメニューが楽しめる。
他にもラルドや生サルシッチャといったこの地方の特産品を楽しむのを忘れてはいけない。
ヴェルシリアのレストランについても今後このブログで紹介していきたい。
安心して街歩きができる(治安が良く、ぼったくりをする店も無い)
私がヴェルシリアで気に入っている点は、とにかく治安が良いことだ。
イタリアの有名観光都市の残念な点は、観光客が物乞いやスリ・ぼったくりの標的にされることだ。
私も学生の時に訪れたローマで、コロッセオの近くでジプシーのグループに取り囲まれた経験がある。
街巡りは楽しかったが、終始身の回りの物に神経を研ぎ澄ませていなければならず、日本に帰る頃にはくたびれてしまっていた。
しかし、ヴェルシリアは同じイタリアとは思えないほど治安が良い。
もちろん住んでいればたまに車上荒らしが起きたという話もごく稀に耳にするが、地元でも治安がよくないといわれるエリアで、観光客とは縁遠い話だ。
少なくとも観光客が標的になるようなスリやひったくりもいないし、外国人に不当な値段をふっかける悪質な飲食店も無い。
夜中に女性が1人で出歩いても何も起こらないし、夏などは夜中の2時過ぎまで賑わっているので夜中でも子供連れで出歩いているファミリーも多く見かける。
有名観光地で神経をすり減らした旅の終わりに訪れれば、きっと別天地に感じることだろう。(少なくとも私はそうだった。)
まとめ
この記事ではトスカーナ州ヴェルシリア地方について紹介したが、少しでも興味を持って頂けただろうか。
今後もヴェルシリアのそれぞれの街の特徴や見どころ、この土地の特産品などについて今後コツコツと記事をアップしていこうと思う。
もし旅程にフィレンツェやピサ、ルッカなどが入っていたとしたら、是非2,3泊ヴェルシリアを旅程に組み込んでみてはいかがだろうか。
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