イタリアvsコロナウィルス – 中国湖北省を追う政府と冷静な対応の医療現場
※新型コロナウィルスについては、別途毎日レポートにまとめていますので、イタリアの様子が気になる方は以下の特設カテゴリから2/29(土)からの感染者数の推移をご確認頂けます。↓

※この日(3/16)のイタリアのコロナウィルスレポートは別記事で挙げています↓

イタリア政府が選んだ封鎖(強制的な外出制限)政策について
日本の一部のメディアでは、イタリアの感染者数の増加や死亡者数、医療崩壊の恐れなど、現地に住んでいる身からするとやや不安を掻き立てるような方向で報道されているように感じます。
今朝も某テレビ番組で、「イタリアの医師の発言」として「90歳の患者からチューブを抜いて20歳の治療を優先させた」などと紹介されましたが、どの病院のどの医師の発言かも不明でした。
おかげで私の元にも日本の家族や友人からは、日々心配するメッセージを続々届いています。
イタリア政府も医療現場も、とても冷静に事態をハンドリングしています。
イタリア国民も、初期の頃は買い占め騒動やミラノ民の大脱走のような事態も起こりましたが、現在では徐々に協力する姿勢に変わりつつあります。
今日は、イタリア政府の政策の狙いと「感染収束まであと一週間」と言われている根拠、そして医療現場の最前線で活躍されている看護師さんの生の声を紹介したいと思います。
イタリア政府の狙いと「感染終息まで一週間」の根拠
感染者数のピークをいかに低く抑えるかが重要なポイント
※ニューヨークタイムズ紙より
既にどこの紙でも謳われている通り、感染者数のピークをいかに医療システムの限界(Healthcare system capacity)未満に抑えるか、というのが重要なポイントになってきます。
強制自宅待機(全土封鎖)の有効性
ワシントンポスト紙のシミュレーションによると、各国で取られている下記4つの政策の内、④強制自宅待機(全土封鎖)が最も有効と結論付けています。
- 自由移動
- 感染者の隔離(地域封鎖)
- 緩いSocial Distancing(社会的距離戦略)=(自主的な自宅待機)
- 厳しいSocial Distancing(社会的距離戦略)=(強制自宅待機、全土封鎖)
①自由移動(Free-for-all)と②感染者の隔離(Attempted quarantine)のグラフ
③自主的な自宅待機(Moderate distancing)と④強制自宅待機(Extensive distancing)のグラフ
※ワシントンポスト紙より
何も対策しない①では、感染者数が早い段階で急激に増加しているのが分かります。これではすぐに医療システムの限界を超えてしまいます。
そして②。武漢やイタリアも先日までこの隔離戦略を行なっていました。感染した人々を隔離するには、そのエリアへ通じる道路・交通機関を全て完全に封鎖し、感染した人は家族からも隔離するなど…現実的には不可能に近いと言います。
結局、感染者は少なからず健常者に混ざってしまい、感染が長引く上、ピークの山も抑えられないと言う事になります。
③の自主的な自宅待機では、人々が集まる場所…公共の施設やレストランなどを閉鎖し、人口の4分の1のみが仕事などの理由で移動し続けた場合のシミュレートです。この場合でも、①や②の施策と比較してみると、感染者数のピークの山が大分低くなっているように見えます。
④ではさらに外出制限を厳しくし、移動する人口を8分の1のみに抑えた場合のシミュレーションになります。
中国が最終的に行なったように、必要最低限の商店以外は全て閉鎖し、人々を強制的に自宅待機にした場合、劇的に感染者数を抑えることができることが分かります。
イタリアも3/12から食料品店や薬局以外の全ての商店を2週間封鎖する全土封鎖の措置を取りました。
このことから、いかに国民がこの政策に協力し、自宅に待機して他人との接触を避けることが大事かが分かります。
※上記はワシントンポスト紙の内容に基づいています。

中国湖北省を追うイタリア
※Coronavirus – Dati e Analisi Scientificheより
上記のグラフは、中国の湖北省とイタリアの累積死者数を表すグラフです。
青がイタリア、赤が中国の湖北省。
今や収拾に向かっている中国湖北省では、武漢だけでなく省全体の封鎖に踏み切った3/1の約一週間後から死者数の増加の仕方が緩やかになり、二週間後以降では死者の増加がほぼ止まっていることを表しています。
イタリアでは、3/8にロンバルディア州、エミリア=ロマーニャ州、ヴェネト州の三州を封鎖し、3/12にはイタリア全土の封鎖に踏み切りました。
これにより、3/12から一週間後、つまり3/19頃から感染の動きが鈍ってくると予想しています。
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イタリアの実際の医療現場の様子
イタリアの医療現場の様子については、医療関係者が泣いて惨状を訴えるお涙頂戴の動画や出どころ不明の医療崩壊情報などがネット上に流れ、イタリアに住んでいても医療現場の正確な実態を知るのは難しい状況でした。
が、本日、フィレンツェ在住で救急隊員のボランティアをされている方が、実際にロンバルディア州のクレモナの病院の様子を記事にして下さいました。
彼女の記事には、フィレンツェから応援チームが感染者が最も多いロンバルディア州へ駆けつけ、満床になった病院から他の州の病院へ感染者を移送するまでの様子が細かく記載されています。
集中治療室は50代未満の若い患者で埋まっており、確かに60歳以上の患者への人工呼吸器が足りていない…しかし救える命は救う。そのために病床に空きがある他の病院へ移送する。
医療リソースの不足も叫ばれている中、定年退職した医師や他の地域から駆け付けた看護師などが総員で救える命を救おうと、懸命に、そして冷静に対応に当たっているとのことです。
報道されているような医療崩壊した地獄絵図のようにはなっていない、とのことです。
そしてここでも、「一人でも感染者を少なくするため、外出を避けて欲しい」と訴えられています。
これが実際の現場の声のようです。
↓chihoさんが運営するブログ、「フィレンツェ田舎生活便り2」より。

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